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海を見に行った日
 19.Sep.2004 (Sunday)、14:30PM、MAKUHARI
 Hanako Oku Street Live

 ガラス貼りの、大きな吹き抜けのエントランスの一角・・・。そのガラスの壁面を背にしてステージが作られていた。
 「素敵な場所ですよね」
 奥華子が言う。
 「空を見ながら、聴けて・・・。私も見たいんだけど・・・」と微笑った。
 確かに素敵な場所だった。まだ夏の香りの残る初秋の空、午後の傾き始めた陽射しを背景に、歌声が響いて行く。
 カメラのファインダーを覗く。こんな時に頼りになる筈の一眼レフは故障で修理中・・・。持参した「スナップを撮り続けているレンジファインダーカメラ」では望遠はピントが合わせ難い上に逆光で暗い。
 心地良い奥華子の歌声を聞きながら、必死でピントを合わせている姿は端から見れば滑稽かもしれないが、実はちょっと幸福な時間でもある。ファインダーの中の奥華子は、裸眼で見るのとは、また違った表情に見えるのだ。背景のガラス越しの景色がまるで、BGVのようだ。
 数枚シャッターを切って、僕はカメラを降ろした。
 にっこりと微笑んで唄う奥華子がそこには居た。
 初秋の陽の傾く空を見ながらの時間が過ぎるのは、あっという間だった。
 ライブの心地よい余韻のまま、僕は海へ出た。
 初めて見る幕張の海は、思ったより広々していて、清清しい。
 潮の香り、波音・・・。ファインダーの向こうに夕日ばかりを捕らえたのは、奥華子の歌声でセンチメンタルな気持ちになっていたからかもしれない。切ない気持ち、そして優しい気持ち・・・。奥華子の「ウタ」はそんな気持ちを連れて来る。
 シャッターを切る度にいつかの光景と、さっきのライブの時の奥華子の笑顔が浮かぶ・・・。頭の中には、ずっと、奥華子のウタが流れていた・・・。
2004.9.25書く
Photo by la_qu
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