Salyuという翼

 Salyuのライブ活動が活発になって来ている。
 Lily Chou_Chou時代から、彼女の楽曲を聞きたいと願って来た我々にとっては、非常に嬉しい事である。
 全く個人的な見解だが、Salyuの声の魅力は高音だと思う。ライブで歌う彼女の声が高くなると、鳥肌が立つ程、自分の琴線に触れる。それは、何オクターヴ迄出るとか、ソプラノとしてどうか、等というスペック的な問題では無い。強いて言えば「声質」だろうか・・・。「回復する傷」等は特に彼女のそんな魅力的な高音を際立たせる。8月のライヴで彼女が薄暗いステージに現れて「回復する傷」を歌い始めた時、正に天上に響く様な・・・若しくは天上から響いて来るような、そんな感覚を覚えた。"待てよ・・・その感じをどこかで以前味わった事があるぞ"と、思い、記憶を辿ってみると、やはり彼女が以前(Lily Chou-Chouとして)行ったライヴでの「Ave,verum Corpus」というモーツァルトの賛美歌を聞いた時だった。そう言えば彼女は、子供の頃合唱団に居て、賛美歌等も歌っていたと言う・・・。
 やはり単にアイドルとして出て来た歌手とは、彼女自身の持っているファンダメンタルが違うと思う。
 雲間から射す太陽の光の帯を「天使の梯子」と言う。Salyuの高音が響く時、彼女を照らすスポットライトが「天使の梯子」に見えて来る・・・。
 小説「リリイ・シュシュのすべて」では「ニンゲンハトベナイ」という言葉が重要なキーワードだった。しかし彼女の歌う歌は、音符(Note)という翼を持って、何処か高みへ舞い上がって行く様に感じられる。彼女の高音には浮遊感がある。歌詞は、Salyuという翼を得て、天上に舞い上がるのである。

ここに使用している写真の持ち出しをかたく禁じます。