歌に座れば

 座って歌う・・・。それが最近のSalyuのステージでのスタイルだ。
 前回のColumnでも書いた通り、声量を稼ぐという事を考えると、座って身体を折った姿勢というのは、圧倒的に不利な筈である。
 しかし、Salyuは椅子に座って目を閉じて歌う。にも関わらず、その歌声が魅力的なのは、御存じの通り。
 Salyuは何故座って歌うのか・・・勿論それはSalyu本人にしか判らない事だ。しかし、「座る」というスタイルがSalyuにとって最も集中出来、又同時にリラックス出来る姿勢なのだろう。
 考えて見れば「座って歌う」と言うのは、「弾き語り」の姿勢でもある。
 Salyuはその閉じた瞳の中で、 「スピリチュアルな何か」を弾き続けているのかもしれない。ピアノ弾き語りのアーティストが、その自らの指の動きと鍵盤を叩くリズムとで、「歌う」という気持ちを鼓舞する様に、Salyuも、その閉じた瞳で見つめる視線の先で気持ちを昂らせる何かを弾き続けているのだろう。

 Salyuが座ると、その場の空気が黙り込む気がする。その高音の神々しさは、立って歌う時と変わらないが、座って歌うというスタイルは、Salyuの「歌」一つのスタイルとして、確立し始めている。
 楽器を持たない弾き語り・・・。
 Salyuの澄んだ歌声は、彼女自身が心の中で弾き続ける、心の楽器の上に流れているのかもしれない。
 

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